Event Report

リジェネラティブ農業種まき体験レポート

2026年01月21日

食・自然・人のつながりを体験する

私たちLivelyは、リジェネラティブ農業を通して、食が自然や人とどのような循環の中で結ばれているのかを体験的に学ぶ場づくりを進めています。こうした想いを共有し、協働できるパートナーを探していた中で、2024年12月、神奈川県藤沢市で「誰もが尊厳をもって関われるユニバーサル農園」を掲げる「にこにこ農園」の井上宏輝さんと出会いました。

その理念と実践に深く共感し、2025年10月19日(日)、にこにこ農園との共同開催により「リジェネラティブ農業:種まき体験プログラム」を実施しました。当日は大人から子どもまで総勢22名が参加し、終了後のアンケートでは、参加者全員から「満足」以上の温かい評価をいただきました。本コラムでは、そのプログラム当日の様子をお届けします。

細部に心を配り、みんなで作り上げた場

開催直前まで雨模様が続いていましたが、当日は雨も上がり、しっとりと潤った空気の中に光が差し込む、清々しい朝となりました。にこにこ農園のシンボルでもある大きな木。その木陰に、今回のメイン会場となる対話と食事の場を設えました。

本プログラムで大切にしたのは、環境負荷をできる限り抑えることです。プラスチックの使用は最小限にとどめ、ビニールシートの代わりに新聞紙を敷き、畳を座席として活用するなど、設営も手作業で行いました。

にこにこ農園の運営に関わる中村さんからは、「昼食の食器も手作りしましょう!」という大胆な提案があり、竹の食器づくりも工程に組み込まれました。少し早めに到着した参加者も、自然と手仕事の輪に加わっていきます。

ダンボールいっぱいに詰められた立派なにんにくを、一片ずつ丁寧に割り、「種まきのタネ」を準備する作業。コップやお椀、お箸にするために、竹をノコギリで切り、やすりで磨く作業。イベントが始まる前から、主催者と参加者という立場を越え、まるで一つの共同体として動き出しているような、静かな一体感がそこには生まれていました。

土の柔らかさに触れながら、一粒ずつ種を蒔く

オリエンテーションからイベントがスタートしました。まずはLivelyの梶谷と沼尻が、本プログラムに込めた想いを紹介し、続いて井上さんから挨拶がありました。その後、参加者全員で畑へと踏み出します。

最初の体験は、にんにくと、冬を越えて育つ日野菜かぶの種まきです。 井上さんの「芽が出る向きに気をつけて置いてくださいね」「ストンと穴が空いたら、そこはモグラの通り道なんですよ」という穏やかなガイドに沿って、一穴ずつ、ゆっくりと手を動かしました。

不耕起栽培の畑は、耕さないことで土の構造が保たれ、驚くほど柔らかく、養分を蓄えた濃い色をしています。カバークロップで覆われた草を刈り、土を少し掘り下げると、土の中で活動する虫の姿や、幾重にも張り巡らされた根が現れ、土が多様な生態系の居場所であることを実感します。

種が土と馴染むように「とんとん」と軽く押さえる指先の感覚を通して、大地とのつながりを確かめる時間となりました。

農園の小さな循環のシステムを探索する

また、敷地内には、自家製醤油が眠る大きな樽や、今年から始まった養蜂など、さまざまな営みが点在しています。参加者も主催者も一緒になって竹を切り出し、飲み口が滑らかになるよう丁寧にやすりをかけて作った竹コップ。特製のハーブティーを注ぎ、味わいながら、農園の中でさまざまな要素が互いに関わり合っている様子を、一つひとつ発見していきました。

食べたもので体はできている

昼食は、炊き立ての新米に、お味噌汁、野菜、そして天日干しされた梅干しをふんだんに使った手作りのごはん。 にこにこ農園が掲げる「ユニバーサル農園」の名の通り、年齢や立場を問わず、誰もが役割を持って関われるあたたかな空気感が、準備から食事の時間までを、より豊かなものにしていました。

「一口食べたら、目をつぶって、自分の体が食べたものでできていることを感じてみましょう」 農園の運営に関わる石井さんの言葉とともに、「いただきます」と声をそろえます。

自作の竹の食器で食事を味わい、食後は食器を燃料へ、残ったお米は鶏のエサへ。準備から片付けまでを皆で行い、自分たちも循環の一部であることを、自然に感じる時間となりました。

お椀の小さな種を見つめながら、一粒ずつ丁寧に土に還していく

昼食後も、再び畑へと向かいました。午後の作業は、聖護院大根の種まきです。指先に乗るほど小さな一粒の種を、決まった場所に一穴ずつ落としていく作業は、とても根気のいる手仕事です。

参加者の皆さまは、教えてもらった間隔に気を配りながら丁寧に穴を掘り、ふんわりと土を被せていきます。仕上げに、種が土としっかり触れ合うよう、手のひらで「キュッ」と軽く押さえていきました。

ふと周りを見渡すと、「あとどれくらい残ってる?」「私はこれくらい」と、お椀に残った小さな種を覗き込み、見せ合いながら進める微笑ましい姿もあります。 一つひとつ種を蒔いていくうちに、土の柔らかさや香り、手のひらに伝わるしっとりとした感触が、午前中よりもさらに鮮明に感じられるようになっていきました。

参加者からのコメントと振り返り

参加者の皆さんからは、「土に触れることで心が整った」「竹を磨く静かな時間や、そこで交わされる何気ない会話を通じて、日々のものの見方が変わった」といった、暮らしに持ち帰る気づきが共有されました。こうしたポジティブな反応を多くいただけたことは、私たちにとって大きな励みとなりました。

一方で、「リジェネラティブ農業について、もう少し詳しく知る時間も欲しかった」という声も寄せられました。今回は“体感すること”を主軸に構成しましたが、この体験をより深い理解や納得感へとつなげていくことが、私たちの次なるステップだと感じています。

担当者からのコメント

私たちLivelyにとって本プログラムは、「食・自然・ひととのつながり」を頭で理解するのではなく、体を通して実感する場をつくることから始まりました。

土に触れ、種を蒔き、季節とともに育て、野菜をいただく。料理をし、誰かと食卓を囲む。こうした一つひとつの行為は、豊かな土壌と、種が育ってきた時間の積み重ねの上に成り立っています。

にこにこ農園の皆さま、そして参加者の皆さまと共に作り上げたこの体験が、誰かにとっての「気づきの種」となり、日々の暮らしや行動をふと立ち止まって見つめ直すきっかけとなれば幸いです。そしてその小さな変化が、より良い未来へとつながる一歩になっていくことを願っています。

次回は、2026年3月1日(日)に「菊芋堀り体験プログラム」の開催を予定しています。また皆さまとお会いできることを、楽しみにしています。

梶谷 知歩・沼尻 真由香・三浦 友見 / Lively担当

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