環境
2025年10月31日

2025年よりLivelyの広報アドバイザーにご就任いただいた「エスヴィータ株式会社」の代表取締役社長・篠﨑祥子さん。化粧品や健康食品の企画コンサルティングやPR、ブランディング、など幅広い事業を手掛けながら、2024年には自社ブランドの化粧品「TEUDU(テウズ)」を立ち上げ、サステナビリティを意識した「美と健康」づくりに注力。リジェネラティブな未来を目指すプランニングスタジオ「i CREATE(アイクリエイト)」メンバーとして、地域貢献や環境活動にも積極的に取り組まれています。
前編では篠﨑さんの起業までの道のりと、地元である岩手県の素材と文化から生まれた化粧品ブランド「TEUDU」についてお話いただきました。後編では「TEUDU」の開発ストーリーの続きと事業を通したサステナブルな社会に向けたアクションについてお話いただきます。
篠﨑 祥子
(しのざき しょうこ)
エスヴィータ株式会社 代表取締役
大手外資系化粧品メーカーで、主に広報、PRやマーケティングに従事。その後も国内化粧品メーカーの広報・PRを担当しながら、商品企画も兼務し、取材対応やイベントの計画立案、プロモーション活動の幅を広げる。
2016年にビューティ&ヘルスに特化した企画PR会社を立ち上げ、ブランディング、マーケティング、PRやマーケティング等、多角的なコンサルティング事業を展開。現在は上場企業社外取締役も兼務。
通常、化粧品を長持ちさせるには防腐剤が必須ですが、肌への負担が大きくなります。そこで保存食の考え方を応用した独自技術を使い、防腐力・抗菌力を保てるレシピを開発しました。他にも、化粧品の原料に岩手県産のシソを使ったり、地元の牧場と共同で廃棄原料をアップサイクルしたりする活動にも取り組んでいます。


地元由来の原材料を使うようにしているのは、単純に地元が好きで、何か還元したいと思ったからです。無農薬で栄養たっぷりの材料を有効活用する手段の一つとして、地元を巻き込んだビジネスを展開しています。
また、子ども時代には「サステナビリティ」という言葉はありませんでしたが、今振り返ってみると生活の中にたくさんの工夫があったように感じます。畑の肥料を作るためのコンポストは当たり前でしたし、物を大切に使ったり、再利用したりすることは日常的な価値観でした。そのため、サステナビリティ先進国と呼ばれるオランダへ留学した際も、違和感はありませんでした。「コンポストできないものは使わない」という衣食住への考え方は、地元に通じるところがある気がします。

香りやパッケージにもこだわりを詰めました。特に香りは納得のいく仕上がりになるまで、何度も試作を繰り返しました。天然の柑橘精油やアオモジ果実油を加え、ボーダレス・ジェンダーレスな香りにしています。パッケージは水をイメージした青色です。
商品名の由来となった「手水(てみず)」のように、一日の始まりと終わりに“自分自身を清めるコスメ”として使ってほしいという想いを込めました。また、ボトルは水のきらめきを表現するハーフミラーコートになっているのですが、加工ができる業者さんがおらず、全国を探し回ったのもいい思い出です。最終的に自動車部品工場に加工を依頼したのですが、実現まで大変な道のりでした。
素材へのこだわりは「地元に還元したい、恩返しをしたい」という気持ちが根本にあると感じています。また、私自身が手術を経験したことで、食べるものや肌につけるものにセンシティブになったことも熱意の理由かもしれません。オランダ人は「Learning by doing(やりながら学ぶ)」ことを大切にするそうですが、前例のないプロダクトを生み出す彼らのマインドを参考に、試行錯誤しながら商品開発を進めてきました。
そしてなにより、私は結構負けず嫌いな性格なんです。自分がやる、と決めたらとことんやりきりたい。自分がこうしたいと思った気持ちに嘘をつかないように行動したいと思っています。

初めて皆さんにお会いしたとき、「フラットな目線が心地いい人たちだな」と感じたことを覚えています。上から目線で「地球を守るべきだ」と語るのではなく、「同じ地球で暮らす仲間として、できることをやっていこう」というスタンスに共感しました。
そうですね、実際に社員とよく「どこまでこだわるのか、何を選択するのか」といった会議をすることもあります。自分だけが体や環境、社会にいいものを目指しても、全ての人が共感して商品を選んでくれるわけではありません。
ただ、その課題が自分事になると行動が変化するのだと思います。私はこれまで開発した化粧品の中で、なかなか売れずに在庫をゴミとして廃棄したことがありました。本当に心が痛い失敗でしたが、そこから私自身の意識が変わり、環境負荷の少ない製品づくりや在庫をなるべくもたない販売に取り組むようになりました。誰かに言われるよりも、自分自身が経験して、気づくことが大切ですね。
現在の日本では、「サスティナビリティ」という言葉がひとり歩きしているように感じる瞬間が多々あります。実際に行動した実感をもって「サスティナビリティ」という言葉を使われている方もいれば、サスティナビリティレポートをブランディングの一部として取り扱っている企業もあります。SDGsウォッシュにならないよう、一人一人がサスティナビリティな社会づくりの本質を見据え、目の前のことから取り組んでいく必要があると感じています。
3年以内には自社店舗をオープンし、コスメの量り売りができたらいいなと思っています。海外では化粧品の量り売りをよく見ますが、日本では一般的ではありません。将来的に様々な化粧品を量り売りできるよう、法整備への働きかけも進めていきたいです。
今後、化粧品をテクスチャーや一時の感覚で選ぶのではなく、持続可能なプロダクトかどうかで選ぶ人が増えたらうれしいですね。「TEUDU」ブランドを通じて、環境へ目を向けるきっかけを作っていけたらと思います。

篠﨑さんのお話からものづくりに対する熱意と追求心、地元への温かな想いが静かに伝わってきました。
ご自身の経験を重ねながら、「肌にも環境にもやさしい化粧品とは何か」を問い続け、10年という歳月をかけて形にされたブランド「TEUDU」。プロダクトひとつひとつには、篠﨑さんの生まれ育ったふるさとの知恵と自然の恵みを大切にする哲学が息づいています。
日本の伝統的な知恵を現代のライフスタイルに寄り添う形で次世代へとつないでいく篠﨑さんの姿勢は、Livelyが描く「豊かな生命が息づく社会」と深く共鳴します。
篠﨑さんには現在、PR・ブランディング領域の専門家としてLivelyのアドバイザーに参画いただいています。2025年4月より定期的に意見交換を重ね、新規事業やPR・ブランディング分野の推進において多くの示唆をいただいてきました。常に同じ目線で課題に寄り添ってくださり、各プロジェクトが実行段階へと進展し続けています。また、Lively主催イベントの実施に際しても、2025年12月の開催に向けて企画・実行面でのサポートをいただいています。
今後も篠﨑さんにお力添えいただきながら、メディア発信にも力を入れていく予定です。
ブランディング・PRの取り組みを一層強化し、社会へのポジティブなインパクトへとつなげられるよう取り組みを活性化させていきます。
西 涼子/ライター
三浦 友見・阿部 莉子 / Lively担当